CTOメッセージ

message

「ミーハーであれ」。
その好奇心が、技術と成長の扉をひらく

取締役CIO兼CTO

水間 乙允

Profile

サンノゼ州立大学への留学を経て、和歌山県初のインターネットプロバイダー立ち上げに参画。2001年に株式会社サイバーリンクスへ入社し、リテイルネットワーク部 担当部長、技術統括室長、事業推進本部副本部長などを歴任。2012年より執行役員 最高情報責任者(CIO)として社内の情報戦略とIT基盤整備を推進。2023年からは取締役 CIO 兼 CTO として、全社横断の技術・デジタル戦略を統括している。また、一般社団法人デジタルトラスト協議会 理事、和歌山大学 客員教授も務める。これまでに、自社データセンターの構築、@rms 初期バージョンの開発、トラスト事業の立ち上げなど、複数の新規事業プロジェクトに携わってきた。

CTO(最高技術責任者)としての役割と、今後の技術ビジョンについて教えてください。

私たちが提供する「シェアクラウド」は、一般的なSaaSや従来のSI(システムインテグレーション)とは異なる、サイバーリンクス独自のクラウドサービスです。
特定の業界に特化したシステムを、複数企業が共同で利用(シェア)できる仕組みとして構築し、設計・開発からインフラ整備、運用・保守、継続的なバージョンアップまで、すべてを自社で一貫して手がけています。この体制により、高機能・高品質でありながら、低コストを実現し、特に食品流通分野では「業界標準」と呼ばれるほどのシェアを獲得しています。

クラウドビジネスを支えているのが、現場のエンジニアたちです。当社はオープンソースを活用しながら、「自分たちでつくり、育てる文化」を大切にしています。システムの根幹を自ら設計し、柔軟かつスピーディーに改良を重ねる。これが当社エンジニアリングの大きな強みです。

技術は日々進化を続けています。だからこそ大切にしているのは、目先の流行に飛びつくのではなく、次に訪れる変化を見極め、先回りして備えること。それがCTOである私の役割であり、当社会長の掲げる「時流を追うな、先読みして備えよ」という言葉にも深く通じます。

目の前にある技術に真摯に向き合い、自ら考え、自分の手で価値を生み出す。その積み重ねが、やがて大きな変化を生むと信じています。

和歌山大学との共同研究では、どのようなテーマに取り組んでいますか。
産学連携の意義や、協働によるメリットについても教えてください。

私たちは和歌山大学と連携し、「サイバーリンクスデジタルトラスト共同研究講座」を立ち上げています。研究テーマは、「分散型ID等の新しいデジタル認証技術を活用したサービスによる社会変革」。私たちのデジタルIDや個人データが、国内外の限られた大手企業に集中している現状をふまえ、それに依存しない仕組みづくりを目指しています。「デジタルトラスト」の構築は、日本社会にとっても大きなテーマだと私たちは考えています。

この研究では、サイバーリンクスが強みを持つセキュリティ分野で中心的な役割を担っています。当社はISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を国内での導入が始まった初期に取得し、創業当初からセキュリティに真摯に向き合ってきました。こうした実績を活かし、研究全体をリードしています。

産学連携の意義は、大学の知見と企業の実践的ノウハウが交差し、技術の社会実装に向けた課題や可能性を多角的に検討できる点にあります。学生にとっても、社会課題に触れながら研究できる貴重な経験の場です。
私たちはこの連携を、地元・和歌山における次世代人材の育成にもつながる、大切な取り組みと捉えています。次の社会の姿を先取りし、その実現に必要な技術や仕組みを見出す。こうした産学連携の力を、今後も活かしていきます。

CTOとして、日々技術とどう向き合っていますか?大切にしている考え方を教えてください。

私がいつも心がけているのは、「ミーハーであれ」という姿勢です。 新しい技術やトレンドに対して、批評する前にまず手を動かし、自分でコードを書いてみる。そうして初めて本当の意味で「わかる」ことがあると実感しています。これは、技術と向き合ううえで欠かせないスタンスだと思っています。
「世界のホンダ」の創業者・本田宗一郎氏は、「技術は知っていて当たり前。大切なのは進歩に対する夢と興味をなくさないことだ」と語っています。私もまったく同感で、技術をたのしみ、素直に飛びついてみることがなにより大切だと考えています。

私は技術が好きで、常に最新動向を追いかけています。今でも読む本の9割以上は技術書です。どれだけ情報が手軽に得られる時代でも、体系的に整理された書籍は、未知の分野に触れる際の最適な手段だと思っています。信頼できる著者の本をとおして、自分の中に知識の棚を増やしていく感覚で学び続けています。

学びを深めることと同じくらい大切なのが、その知識を使って考え、対話し続けることです。「細かいことはわからない」と言って議論を止めてしまう空気には強い違和感があります。新しい技術に対し、触ってもいないのに“わからない”とだけ言って、思考や対話を放棄してしまう姿勢には、なおさら共感できません。
細部に目を凝らし、粘り強く議論を重ねることでしか本質にはたどり着けません。技術は決して万能ではありませんが、それをどう使うか、どこに活かすかは私たち次第です。

私の技術観の根底には、金出武雄先生の著書『独創はひらめかない』の考え方もあります。「独創」とは天から降ってくるものではなく、膨大なインプットと地道な試行錯誤の上に成り立つもの。日々の地味な検証や仮説の積み重ね、そして現場の声に耳を傾ける姿勢こそが、やがて大きなブレイクスルーにつながっていきます。
私はそう信じて、今日も仲間とともに技術と向き合っています。

これからのサイバーリンクスにおいて、
どのような仲間と一緒に働きたいと考えていますか?若手人材に期待することは?

技術を語り、どんな社会を実現したいかを描ける。そんな仲間と一緒に未来をつくりたいです。単なる「評論家」ではなく、社会課題への貢献を考え、それを自分の言葉で語れる人。自ら手を動かし挑戦を続ける姿勢を持つ人を、若手人材として期待しています。
当社は自社でデータセンターを設計しクラウドでサービスを構築しているため、幅広い技術に触れながら、それが社会にどう役立つかを実感できます。技術が好きで、社会の役に立ちたいという想いを持つ方と、次の時代を切り拓く挑戦に踏み出せたら嬉しいです。