気候変動に関連した情報開示(TCFDに基づく開示)

ガバナンス
当社グループでは、グループ全体のサステナビリティ経営の推進のため、常勤取締役、執行役員及び部門長によって構成されるサステナビリティ委員会を設置しています。
当委員会は、マテリアリティに関連する項目について四半期に一回協議・決定し、取締役会に報告することとしています。
気候変動課題が当社グループに与える影響の評価や、それを踏まえた戦略の検討についても同プロセス上で実施しており、取締役会ではこれらの報告を踏まえた審議及び決定を行います。
取締役会での決定事項は、サステナビリティ委員会、各事業部門・グループ会社の順に通達され、各施策の実行に移されています。

戦略
当社グループでは、将来の不確実な気候変動リスク・機会による影響を、国際エネルギー機関(IEA)並びに気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表している複数のシナリオを使用して特定・評価しています。
産業革命期と比較して2100年までに気温が4℃上昇する4℃シナリオと、脱炭素化の取り組みが推進され1.5℃目標が達成されるとした1.5℃シナリオの2つのシナリオを設定し、2030年と2050年時点での気候変動リスク・機会による影響について定性・定量的にシナリオ分析を実施しています。
以下は2023年10月までに実施したシナリオ分析で使用した設定シナリオと分析結果、並びに取り組み方針の説明です。
4℃シナリオ
産業革命期と比較して2100年までに気温が4℃も上昇すると想定したシナリオ。
脱炭素化に向けた取り組みが現在から強化されないため、地球温暖化が成り行きに進み、異常気象などの災害の規模や頻度が拡大すると見込まれる。
参考シナリオ
・RCP8.5(IPCC)
・STEPS(IEA2021-2022)
1.5℃シナリオ
産業革命期と比較して2100年までの気温上昇を1.5℃~2℃までに抑えられると想定したシナリオ。
カーボンニュートラル実現に向けて、各国の政府や市場が脱炭素化に向けた取り組みを強化すると見込まれる。
参考シナリオ
・RCP2.6(IPCC)
・SDS/NZE2050(IEA2019,2021-2022)
4℃シナリオ
4℃シナリオでは、豪雨や台風をはじめとする自然災害の激甚化や、慢性的な気温上昇が予測されています。
当社グループでも洪水によって操業を支えるインフラや自社施設が物理的被害を受けることが想定され、ハザードマップ上で最大3m程の洪水被害が示されている地域に所在する自社保有拠点が和歌山県和歌山市に集中していることを確認しているほか、気温上昇に伴い空調コストが増加するというリスクを確認しています。
ただし、事業継続の面で最も懸念される当社グループが保有するデータセンターについては、その殆どがハザードマップ上で洪水並びに高潮被害の想定域外に位置しており、また万が一被災する場合にも当社グループが保有する複数のデータセンター間でバックアップが可能であることから、気候変動による物理的被害に対するレジリエンス性については現状十分に確保されているものと評価しています。
一方、総合防災システムサービスへの需要や、BCPやセキュリティ意識の拡大によるクラウドサービス全般への需要が増加するという機会についても認識しています。
1.5℃シナリオ
1.5℃シナリオでは、脱炭素に関わる政策や規制の厳格化が見込まれる中、当社グループではデータセンターの保守運用にあたって多くの電力消費を伴うことからも、カーボンプライシング制度の導入による支出の増加や、エネルギーミックスの変容による電力価格の高騰などエネルギー支出面でのコスト増加が想定されます。
一方で、サプライチェーン全体での脱炭素化、脱炭素化に向けた業務効率化、ペーパーレス化、食品ロス削減、などの取り組みを推進する顧客に向けたクラウドサービスの需要が増大することも想定しており、当社グループの重要な戦略上の課題の1つとして認識しています。
現在の取り組み状況として、洪水被害などの物理的リスクに対しては、大規模な自然災害などが発生した場合に備え、緊急事態の通報体制や緊急事態対応体制を整備するなど、BCPの強化を行っています。
移行リスクについては、多くの電力消費を伴うデータセンターでは仮想化技術や省エネ装置の導入から積極的に省エネルギー化を推進しているほか、従業員の行動面でもテレワークやフリーアドレス導入、服装の自由化や週に一度の定時退社推進などから、業務効率化を通した省エネ化に取り組んでいます。
販売するサービスについても、上述の通り地域社会の防災支援や食品小売事業者様の適正な仕入・在庫管理に貢献しており、社会的要請を踏まえた更なる開発努力を通してお客様の業務効率化と環境負荷低減への貢献を目指してまいります。
脱炭素への移行に伴う影響
項目 | 区分 | 事象 | 評価 | |
---|---|---|---|---|
4℃シナリオ | 1.5℃シナリオ | |||
政策・規制 | リスク | 炭素税導入による操業コスト増加 | ー | 大 |
機会 | ペーパーレス化や省エネ、食品ロス削減の推進による、システムサービスやクラウドサービスの需要増加 | 中 | 大 | |
技術 | リスク | 高効率な設備機器の普及による設備導入及び切り替えコストの増加 | 中 | 大 |
市場・評判 | リスク | 再生可能エネルギーの開発に伴う購買電力価格の高騰 | 小 | 中 |
リチウム等の価格高騰にによるスマートフォンやタブレット端末の高騰に伴う買い替え需要の低迷 | 小 | 中 | ||
脱炭素対応のための諸費用の圧迫による、システムサービス利用に対する投資意欲低下 | 小 | 中 | ||
機会 | サプライチェーン全体での脱炭素化を目指す企業のクラウド化および環境配慮型データセンターの需要増加 | 中 | 大 |
気候変動による物理的影響
項目 | 区分 | 事象 | 評価 | |
---|---|---|---|---|
4℃シナリオ | 1.5℃シナリオ | |||
急性 | リスク | 洪水や高潮の発生による自社施設への直接的被害 | 大 | 大 |
インフラの被災によるネットワーク機能の停止とCATVケーブルの破損 | 大 | 大 | ||
機会 | 総合防災システムサービスやクラウド化需要の拡大 | 大 | 中 | |
慢性 | リスク | 主にデータセンターにおける空調利用量の増加 | 中 | 小 |
(注)影響度評価の指標は以下の通りです。
大:影響額が経常利益対比で±1%を超えると想定されるもの
中:影響額が経常利益対比で±1%未満のもの
小:影響が軽微なもの
2023年中に実施したシナリオ分析では、財務影響試算を実施した項目の中でも炭素税リスク並びに洪水による物理的影響が特に影響が甚大であると評価しています。
炭素税影響についてはIEAのWEO2022にて報告されている主に先進各国における2030年時点で想定されるカーボンプライス価格140USDを参考に、2022年12月期のScope1,2排出量実績である2,306.2t-CO2が2030年時点においても同程度排出されるものと仮定してインパクトを試算しています。
なお、資産にあたって影響金額を円換算するにあたっては、同報告書中にて使用した為替レートとして示されている109.75円/USDを使用しています。
洪水被害については、国土交通省の公表する「治水経済調査マニュアル(案)」にて示された直接・間接被害額算定のロジックを参考に、弊社拠点住所別にハザードマップを調査し、その最大浸水深予想に基づいて想定される最大の被害想定額を試算しています。
そのうえで、他のリスク項目のインパクト評価との相対的な重要性評価の観点で、各拠点の氾濫が予想される近隣河川の河川等級に基づく年超過確率(洪水が発生する確率)を乗じることで、 2030年時点における保有リスク評価額に均しています。
最後に、同じく国土交通省の公表する「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」にて示された各シナリオにおける洪水発生頻度倍率を上知ることで、各シナリオにおける洪水被害による被害のインパクトを推計しています。
項目 | 事業インパクト(百万円) | ||
---|---|---|---|
4℃シナリオ | 1.5℃シナリオ | ||
移行リスク | 炭素税 | ー | 35.4 |
物理リスク | 洪水による直接被害額 | 38.9 | 13.6 |
洪水による営業停止損失 | 23.8 | 8.3 |
(注)1.上記の試算結果は2030年時点における財務インパクトを想定したものです。
2.洪水リスクについては、2023年8月時点のハザードマップに基づいて試算しています。
3.上記試算結果については、外部のコンサルティング会社に委託して試算したものです。
リスク管理
当社グループは、サステナビリティに関するリスク及び機会については、サステナビリティ委員会において協議されます。
気候変動に関するリスクと機会については、将来世界の複数の温度帯シナリオを用いたシナリオ分析を通して当委員会が識別・評価しています。
サステナビリティ委員会は、経営戦略会議並びにリスクマネジメント・コンプライアンス委員会と同メンバーで構成されており、サステナビリティ委員会で討議されたリスクのうち、緊急性の高さやリスク発生後の対策面でも準備を要する影響は、必要に応じてリスクマネジメント・コンプライアンス委員会でも取り上げ、グループ全体のリスク管理プロセスに統合することとしています。
これらのプロセスを経て検討された対応策などの決定事項は、各委員会を通して各事業部門・グループ会社へ指示として下り、各施策を実行することでリスクの回避、低減及び移転に努めています。
なお、これら一連のプロセスはサステナビリティ推進体制のもと、四半期に一度取締役会へ報告され、重要な事項については取締役会にて決議・指示を行うなど、全社的なリスクマネジメント活動の監督が適切に図られるよう体制を整えています。
指標と目標
当社グループでは、シナリオ分析により特定した影響やサステナビリティに対する基本的な考え方に基づき、温室効果ガス排出量をはじめ、以下一覧に示した定量情報を気候関連課題に関する取り組み指標として管理しています。
また、目標としては温室効果ガス排出量を、2022年比で2032年までに42%削減することを掲げており、その実現に向けて、当社グループのデータセンターで使用する電力を順次CO2フリー電力へと切り替える、社用車の電動化を推進する等の対応を進めております。
温室効果ガス排出量
項目 | 2022 | 2023 |
---|---|---|
Scope1+2 | 2,306.20t-CO2 | 2,341.20t-CO2 |
Scope1 | 170.2t-CO2 | 179.0t-CO2 |
Scope2 | 2,136.00t-CO2 | 2,162.20t-CO2 |
エネルギー使用量
項目 | 2022 | 2023 |
---|---|---|
総エネルギー使用量 | 19,578.30GJ | 19,997.20GJ |
系統電力の割合 | 87.0% | 85.6% |
再生可能エネルギーの割合 |
0.5% | 1.3% |
気象災害起因のサービス中断
項目 | 2022 | 2023 |
---|---|---|
発生件数 | 0件 | 0件 |
総ダウンタイム | 0時間 | 0時間 |